WAGWインタビュー
書いたひと
テレサ
ロンドン、まばゆいような美しい、ある春の日、皆が、- といってもその殆どが女性だったが
_ 思わず振り返って見た、ある豪奢なホテルのロビーをコリン・ファースが通り抜けていったのを。 理由は簡単。 43歳、「ブリジット・ジョーンズの日記」や「高慢と偏見」の、6フィート1インチの身長の、カッコいいイギリス人のスターは、ハンサムでカリスマティックで、すぐに目立ってしまう。 たとえ、今日の彼の格好が、ブリーチの上の濡れた、フリフリシャツでなくて、シンプルなブラックのスーツだとしても。
皮肉なことに、彼は新作ロマコメ”What a Girl Wants”の宣伝でココにいるのだが、未だにダーシーのセクシーなイメージにつきまとわれている、というのも、コリンが演じているヘンリー・ダッシュウッド卿は、かなり気難しそうな貴族さまなのだ。 (ダーシーと)大きく違っているのは、ヘンリーには実は秘密のワイルドな過去がある、ということ。 そして、ボヘミアンな母親が、ただ一人の人、と、思っている、なのに会ったことのない、そんな父親に会いたくてしょうがない、という、アメリカ人のティーンエイジャー、ダフネという娘まで知らないうちに出来ているのも、また、大きな違い。
ここで、コリンは、この新しい映画、ブリジット・ジョーンズとはどうなっているのか、体重問題、身体的なイメージ、バイク、中年男に訪れる危機、そして、彼に与えられているセックス・シンボルというステータスについて、語ってくれた。
Q: (映画の製作者たちは)あなたにこの映画をやってもらうのに、あなたの意思をちょっと曲げるよう説得したのでは?
コリン: ちょびっとね。 だって、こんな世界、実際にはあり得ないわけだし、自分がやりたいと、多分思ったことのないタイプの映画だったし。 でも、完璧にマイッちゃってね、(監督の)デニーに会った途端、このヘンリー卿をやりたくない、という抵抗の気持ちはあっという間に消えてしまったんですよ。 ボクは以前にもお堅い奴的な役は何回かやっていたんですけど、彼女は説得するのが巧くてね、僕のイギリス人典型の抑制した静かな物腰を開放してこじあけてくれたんですよ。 それにね、ふと思ったんです、そういえば、自分の子供たちを連れて観にいけるような映画って一度も作ったことがないなあ、で、こう考えた、やってみればいいじゃん、と。 ロマコメは前にやったことはあるけど、お子様向けじゃないしね。 ブリジット・ジョーンズはアナル・セックスの話をするんだものね、実際。 それで、なるほど、このプロジェクトは、楽しい全く健全で無害なものになるように感じられて、僕が感じていた抵抗感は、むしろスノッブさから来ていたものだと気づいたんです。
Q: ヘンリー卿の役をやってて何か驚きはありました?
コリン: 一番驚いたことといえば、ああ、今や、ボクも、こんなキレイなティーンエイジャーの娘を持つ、中年の政治家をやるような年になった、と気づいたってことかな。 まあ、ちょっとしたショックでね、正直に言うけど、あまり心地よい発見じゃなかったの。 もしも、赤ちゃんとか、5歳の子供のお父さんとかを演じるなら、もっと気分良かったと思うけど。 でも、バイクに乗るシーンとか、鏡の前でギターの弾きマネをやる所では、自分の中の内なるティーンエイジャーを曝け出す必要もあったんですよね。 映画でバイクに乗るシーンをやったのは初めてだったし、ティーンエイジャーの男の子が皆思っているように、僕もかつてロックンロールバンドをやりたいって夢があったもんだから、結局はそんなに落ち込む必要は無かったですよ。 若い時は10年くらいずっとあんな感じだったからね。
Q: アマンダとの仕事はどんな感じでした?
コリン: 彼女には本当に感心しましたねえ。 ちょうど今、オトナの女優として見事に成功したキャリアの先を走っている、といえるでしょう。 それに、とても才能があるし、成熟しているし、大変長いキャリアを積んでいるし。 (この映画をやってて)もう一つのショックはそれでしたね。 彼女はとても若いけれど、おそらく、この業界では僕が20年やってきたのと同じくらいの数、撮影セットにいたんでしょうから。 おかげで突然、自分がものすごく年寄りくさく思えたものですよ。
Q: この映画での役柄と同じように、あなたにも、アメリカ人でお母さんと一緒にLAに住んでいる息子さんがいますよね。 自分に結びつけることもあったのでは?
コリン: ええ、実に共感することが出来ましたよ。 この映画を観た親御さんならどなたでもそういう風に自分に重ねあわせることがあると思うんですけどね、ボクは確かに、そうでした。 今でも息子には頻繁に会ってはいるんですけど、彼はココに住んでいるわけではないんでね、ですから、ちょっと同じような気分を味わいました。
Q: ヘンリーは、またもや、“強いけど、静かな”という感じの役ですよね。 ワンパターンなキャスティングをされがちで心配になりませんか?
コリン: ええ、なりますよ、だから、今は、こういう“強いけど、静かな”男性タイプの役をまた演じることに結構注意はしています。 第1にね、こういう役柄は、つまらないよね、演じる側にしても観るにしても。 この映画でヘンリーがそうであるように、他のいろんなタイプの役柄もやりながら、時々演るっていうのは楽しいと思いますけどね、ただ、僕は、ルーザー的な役の方が演じるのにずっと面白いと思っています。 失敗したり、あがいてみたり、不安定だったりする中にある困難さ、こういう葛藤がある方が、役者として、また、一人の人間として、ずっと面白いとボクには思えますね。
Q: ケリー・プレストンと仕事をするのはいかがでした?
コリン: 彼女とはもっと多くのシーンをやりたかったな、と思ってますよ、というのは、彼女は一緒にいて実に楽しい人だったのでね。 実は、いつも、ハリウッドの役者さんと仕事をする時はちょっと用心深くなるんですよ。 ボクからしてみると、ハリウッドというところは、オリンポスの山みたいな感じがあってね、それに彼女は、あの世界で最も有名な人物の一人、ジョン・トラボルタと結婚しているわけだしね。 で、こう思うわけですよ、彼らはお高くとまっていて、ボクとは違うタイプなんじゃないか、って。 でも、とんでもなくてね、実際にあった彼女は、そりゃあ驚くほど美しくて、非常に暖かい人で、チャーミングで、常にプロフェッショナルな人でした。 彼女は、ホント、キラキラするような感じの人ですよ。
Q: ジョン・トラボルタには会えました?
コリン: 残念ながらね、彼は来ませんでした。 ボクは会いたかったんだけどね、ちょうど彼はあの頃ジャンボ機を運転して飛び回っていたんですよ。
Q: ブリジット・ジョーンズの続編はどうやら出来そうな様子ですが、スクリプトはもうご覧になりましたか?
コリン: いいえ、まだです。 でも、まあ最近は何か動きがあるみたいですし、スクリプトの締切も新しく決まったみたいだし。 ただ、正直なところ、今実際どうなっているのかボクは知らないんですよ。 皆でスクリプトを見ることにはなってはいますが、ひどい出来だったら、きっとボクには見せないだろうしね。 ボクが思うのは、他の(普通の)映画と同じようなかん時でスクリプトを扱う必要がある、ということですね。 だって、続編をやったり、同じ役を繰り返す、ってことには何も面白さは感じませんからね。
Q: こんなに多くの人が最初のオリジナルを好きだとしてもですか?
コリン: ええ。 だからこそ、本当に面白いものでなければ、続編は無い方がいい、ってことでしょうね。 もう、こんなに成功したんだし、皆楽しんだんだし、だから、ほっておけ、また同じような魔法が手に入るとは思うな、とね。 でも、新しいスクリプトが新しい世界をまた開くようなものであれば、そしてとても新鮮なものであれば、興味は俄然湧きますよ。
Q: ダーシーをもう一度演じたいと思います?
コリン: もう一度ねえ、それはもう、とにかくスクリプトによりますよ。 今のところ、ボクが今きいている話はとても面白そうなんです。 新しい登場人物もいるし、話がもっと新しい所に広がっているし、それに、明らかに、原作には忠実らしいし。 あまり、お似合いとはいえないカップルが自分達を探しあう、という話ではなくて、関係を続けていくことの難しさとか、それでも互いを再発見する、ということについての話になるみたいですね。
Q: ダーシー役を演じるご自分のことを読んだり、そして、実際にそれを演じる、というのは、なんとなく奇妙な鏡の間にいるような感じがしません?
コリン: 全くその通りですよ。 あまりにも奇妙なもんだから、どこまでがウソでどこまでが本当か、もう自分ではわからないですね。 実にアイロニーが重層的に積み重なっている感じでね。 実際、続編の本では、ブリジット・ジョーンズとボクの悲惨なインタビューシーンがあるんですけど、ボクの母なんか、かわいそうに、本当のインタビューだと思ってね。(笑) 気をつけなさいよ、なんて、ボクに電話までかけてきたんですから。
Q: ダーシーというのは、女性のとってのファンタジー的存在なんですか、それとも、ああいう男性って本当にいるんでしょうか?
コリン: 全くのファンタジーでしょう。 もしもパーティに行って、本当にダーシーみたいな奴に会ったとしたら、全く、気取り屋のアホじゃないか、と思うんじゃないの。 あんな感じで行動する人なんていませんよ、まあ、黒い制服着ている、自意識過剰の男子学生だったら、あり、かもしれないけど。
Q: あなたは実生活では、強いけど静かな的なタイプですか、それともちょっとした情けないオタク系?
コリン: もうまるっきり、オタクです! ボクはかなりのマヌケボケタイプだからね、実生活であんな風に悶々としていたら、ただ笑われるだけでしょうね。 あんなことがうまくいくのはドラマの中だけですよ。
Q: あなたが、ルネ・ゼルウィガーに続編準備のために太りなさいとアドバイスした、などというウワサがあるんですが。 実際には彼女に何と言ったのですか?
コリン: (笑いながら)何にも言ってませんよ、だって、続編が実現するという話さえまだ決まっていないんですから。 それにボクがルネに、ブリジット・ジョーンズの演技について何か言う必要なんてさらさら無いでしょう。 オリジナルで、一番不思議だった光景といえば、この若い、とても魅力的なハリウッドのスターのルネがですよ、次から次へ1パイントのギネスを飲み干していく様でした。 こんなことそうしょっちゅう見られる光景じゃありませんよ。 そんなこと気にかけない人もいれば、ブリジット・ジョーンズみたいに、翌朝は屈辱的な気分になる、っていう人もいるでしょうが、ルネの場合はね、積極的に、しかも楽しそうにやってたんですから。 一方、ヒューとボクは、随分と神経質に、40歳なのに、なんとか若々しく見せようと必死だったんですよね。
Q: ルネが今築いた新しいメジャースター的地位をどう思います?
コリン: 全然びっくりはしませんよ、正直なところ。 初めて彼女を「ザ・エージェント」で観た時から、彼女には実に才能があり、しかも自然発生的でまたリアルだなあ、と思ったものです。 もう同世代の中での抜きん出た存在です。 彼女が演じてきた仕事を見ると、彼女のようなレベルで出来る人は誰もいないですよ。 実に多彩な役柄を、「ザ・エージェント」から「ブリジット・ジョーンズの日記」まで、「ベティ・サイズモア」から「シカゴ」とね、演じているわけですよ。 見事な才能、ホンモノですよ。
Q: 彼女の成功をうらやましく思ったことはありますか?
コリン: いいえ、とんでもない! そりゃ、成功するなんて、びっくり、と思えるような役者さんもいるにはいますけどね、宝くじにでも当たったみたい、ただラッキーだけなんじゃないの、みたいなね。 でも、彼女は違いますよ。 今の地位に値する人です。
Q: ブリジット・ジョーンズ役を演じた後で、すぐに体重を落とさなければならないプレッシャーがあったと、ルネが不満をこぼしていましたが。 ハリウッドの、痩せたロリポップキャンディタイプの女性を好む傾向をどう思いますか?
コリン: その話は、まさにダブル・スタンダードを表している、といえるでしょうね、だけど、男性にもプレッシャーがあるんですよ。 たとえば“美しい身体”を持っていることで有名な人は、年を重ねていくともう罰せられる。 ただ、女性側へのプレッシャーの方がもっとひどいものだろうと想像はつきます、だって見ればわかりますよね、すぐ。 とても健康とはいえない状態で痩せていなくてはならない、といった女性がハリウッドには沢山います。 ですから彼女達が抱えているプレッシャーはとんでもないものでしょう。 それにね、スクリーン上で観る時、彼女達がどんなに痩せているかは全く判らない、カメラは彼女達の本当の姿を映しはしないからです。 スクリーンでみると、少し体重も増えて大きくなったような感じになっているんです。 なのに、授賞式などで実際の彼女達を見ると、非常に恐ろしくなります。 あんなキレイな女性達が、もう飢餓状態になっている、というかそうせざるを得ない、というね。
Q: 男性として、ああいうルックスは魅力的と思いますか?
コリン: 全然そう思いませんね。 それに、ボクの知っている男性も殆ど、そういうルックスが魅力的だとは思っていませんよ。 彼女達が、心配しているのは、その身体的イメージなのか、あるいは映され方なのか、それこそガリガリのモデル達が写っている広告がうるさく、どデカく目立っているからなのか、何故なのかボクにはわかりませんが、ま、理由が何にせよ、(この傾向が)いいことであるわけはないんです。 魅力的でない上に、健康じゃない、それに、セクシーでもありません。
Q: あなたはかつて、ブリジット・ジョーンズの時のルネの方がもっとセクシーだった、と語ったことがありましたが、彼女が、また、もっと太るように、と、説得したいと思います?
コリン: 彼女は、どんなサイズになろうと、実に素敵だと思ってますし、それに、彼女が今、何サイズかなんて知らないし、だって、あの映画以来会っていないんですから。 ただ、言えるのは、ブリジット役の彼女は、ボク的には“太っている”ようには見えなかった、ってことです。 全然です。 彼女のことは可愛らしいと思っていたし、一度も彼女が太りすぎだと思ったこともありません。 それに、ボクは、ブリジット・ジョーンズは太っているべきというイメージは持っていません。 ここで問題になっているのは、自分達が太っていない、と、思っている女性に何人か会ったことありますか?ってことですよ。 女性達の殆どは、自分のお尻が大きすぎるんじゃないか、とか、太ももが太すぎるんじゃないか、とか、いろいろ思っているみたいですけど。 こうじゃなくちゃいけない、でないと、もう駄目、という風に、自分に厳しすぎるように思えるし、ボクにしてみれば全くありえない基準で、彼女達は自分の身体を判断している。 それが、いろいろな矛盾の一つになっているわけです。 しなくてもいいのに、自分を傷つけようとしている、という矛盾です。 人が、魅力的だと感じる時、そういうルックスで決まったりはしないものです。
Q: 何があれば、ハリウッドでフルタイムで働くことになると思います?
コリン: とんでもない革新的で予想のつかないことが起こらない限り、僕があそこに行くことはないでしょう。 いえ、別にあそこが嫌いだから、というわけじゃないんですよ。 ボクはロンドンにいて楽しい、ただそれだけなんです。 ボクはこの街が好きだし、それに一杯刺激をもらえるし、自分の人生で大きく変化をもたらしてくれるし。 LAは好きです、友人も沢山いますし、でも、ボクはここロンドンにもう根付いているのでね。
Q: 多くのイギリス人の俳優につけられてしまっている“ハンサムちゃん”的なイメージのために、ハリウッドで役につきたくない、と、ひいてしまったことがあります?
コリン: いえ、そうは思いませんね。 その人がある役にぴったりなのであれば、配役される、それだけのことだと思いますよ。 それに毎年のオスカーを見ればどれだけ一杯イギリス人がいるかわかるでしょ。 いつも、ハリウッドは、イギリス人で溢れてるんですよ。
Q: 今のご自分のセックス・シンボル的地位についてどう感じてますか? 今でも多くの女性がアタックしてきます?
コリン: 始まりは全て「高慢と偏見」から、そして、ブリジット・ジョーンズが出た後、まさに行き過ぎの感があり、と、こういうことでしょうが、まあ、とにかく、非常に奇妙な感じがします。 道を歩いていて、女性達がきゃーと騒ぐ、それに特に問題がないと思っている時は、悪い意味で“奇妙”とは思いませんよ、なんというかとても“特別な”感じがあります。 もしもこういうことがボクが23歳で仕事を始めた時に起きていたとしたら、人生誤っていたかも、と思いますね。 自分自身が何者なのか、とか、自分の役者としての力量を、歪んだイメージで捉えていただろうし、なんでこういうことがもう自分の身に起きないのだろうか、と、その後はずっと悩みながら人生過ごす、ってことになっていたかもしれません。 だから、ちょうどいい時期にああいうことが起きてラッキーでしたよ。 実際(こうやってキャーキャー騒がれることは)理解は出来ないんだけど、ただ、無視されるよりはまだマシかな、と。
Q: 今までの自分の人生で、ご自分が思われている典型的イギリス紳士タイプのイメージに反することをやったことがあるなら、一つ挙げてもらえます?
コリン: う〜ん、この映画でいえば、ボクは、バイクに乗るのにかなり夢中になったんです。 こういうマトモなホンモノのバイクに乗ったのは初めての経験だったんで。 それに、ボクくらいの年齢の男が乗るとしたら、そりゃあ、大変なことが山ほどあるんですよ、もう中年の危機がいろいろと教えてくれるわけだから。 実際のところ、本当に、マジに、バイクを買おうと思っていたんです。 で、映画が終わる頃には、もう買おうと本気で思っていたんですよね、それも1台だけじゃなくて、ガレージ一杯くらいに。 だけど、バイクに乗ってて自分がいろいろと仕出かした悲惨なことを考えると、小さい子供の父親としては、かなり無責任なことだと思いまして、で、目が覚めました。 と、いうわけで、二度とボクには、「大脱走」のスティーブ・マックウィーン役は回ってこないし、ジミー・ページ物語も出来ない、ということになったんです。 ま、夢が適う、その寸前まで行けた、ってことですね。